Thirty’s

昼休みの省内食堂は、今日も大勢の職員でごった返していた。そんな中でも、大臣政務秘書官は、その長身も相まって、歩いているだけで周囲の視線を集める。


当然、その隣を歩く私たちにも視線は向けられる。なんとも言えない居心地の悪さをごまかすように、私は茉莉へ声を掛けた。


「今日はどれにする?」


「手っ取り早いのは、やっぱり麺類ですよね。」


意見が一致して、麺類コーナーへ向かおうとすると、


「そんなんじゃ、夜まで持たないだろう。ご馳走してやるから、ガッツリ食べろよ。」


山本秘書官が笑いながら言って来る。もう私たちが残業する前提の物言いだが、まぁそれは現実だから仕方ない。


「そんな、いつも申し訳ないです。」


秘書官は、私たちを誘う時は決まって昼食代を出してくれるから、遠慮すると


「いいんだよ。そのうち、こんなことも気楽に言えなくなるんだから、今の内だ。」


「どういうことですか?」


「まぁ、そういうことだよ。」


茉莉の質問を笑ってはぐらかす秘書官。結局、ご厚意に甘えることにして、メニュ-を受け取った私たちは、空いている席に着く。


「本当に明日は動きますかね?」


空転中の国会の動向を、茉莉が秘書官に尋ねると


「見せ場の欲しい野党に、与党がお付き合いしてるだけだからな。例によって、出来レースみたいなものさ。バカバカしいとは思うが、これも政治だ。」


ややうんざりしたような表情で言った秘書官だったが、すぐに


「それより、そっちは大丈夫なのか? 事務秘書官が総務課長をだいぶ絞ってたぞ。」


と逆に聞き返して来る。