Thirty’s

こうして通話を終えた私たち。


(これでいよいよすれ違いも解消だね・・・。)


私がそんな思いに耽っていると


「彼氏からか?」


との声が。振り向くと山本秘書官だ。


「はい。」


「どうかしたのか?」


「いえ、なんか辞令が出たらしくて、その報告です。」


隠しても仕方ないので、正直に答えると


「引っ越し屋さんだったな、確か。営業所が替わるのか?」


「いえ、今度本社勤務になるそうで。」


その私の答えに、一瞬秘書官の表情が曇ったような気がしたが、すぐに


「栄転という奴か、おめでとう。」


と祝福してくれる。


「ありがとうございます。」


「桜井もなかなか彼氏と時間が合わなくて大変だったらしいが、まぁよかったじゃないか。」


「はい。」


「これでいろいろ話が進んで行くことになるのかな?」


「そうだといいんですけど。」


「俺もこのGW、地元に帰って、いろいろ言われたよ。いい加減、慎太郎ぼっちゃんも嫁を貰わないと、選挙に出られる時に体裁が悪いでしょうって。」


「えっ、いよいよ大臣の跡を継がれるんですか?」


驚く私に


「いやいや、親父はまだ当分引っ込まないよ。ただ、俺を参議院選に担ぎ出そうとか、取り敢えず県議選に出て、政治の経験を積ませるべきだなんて連中もいるんだよ。」


そう言って、苦笑いを浮かべる秘書官。


「そうなんですか・・・。」


「大きなお世話と言いたいところだが、まぁ田舎だと俺の齢で独身は相当体裁が悪い。対立候補の陣営からもガタガタ言われるし、そろそろ急がなきゃならんのかもな。」


そう言って歩き出した山本秘書官が


(どうやら、本当に急がねぇとな。)


心の中で独り言ちていたことなど、当然私は知る由もなかった。