Thirty’s

「私もだよ。」


そう言って、彼を見上げる。


「総一郎。」


「うん?」


「寂しかったよ。」


「加奈・・・。」


「前にも言ったけど、私たち、ずっとただの同居人だった。」


「ごめん。」


「謝らないで。あなただけの責任じゃないんだから。でも・・・これからは変わるよね?」


「ああ。」


「よかった・・・。」


ここでふと会話が途切れた。改めて見つめ合った私たちは、やがてどちらからともなく唇を重ねた。


しばらくして唇が離れると、また私たちは見つめ合う。


「戻れたね、私たち。」


「?」


「ちゃんと恋人に戻れた。」


「ああ。」


少し風が強くなる。私は髪を押さえながら笑った。


空は完全に藍色へ変わる。海面にも無数の光が揺れている。


「きれい・・・。」


私は思わず呟いた。でも総一郎は夜景ではなく、隣にいる私を見ている。