Thirty’s

夕方のお台場は、昼間とはまた違う顔を見せ始めていた。


海風が少しだけ冷たい。水平線の向こうへ、ゆっくりと夕日が沈み始めている。夜の帳が降り始め、レインボーブリッジのライトアップが目に鮮やかに飛び込んで来る。


その美しい光景を、並んでしばし言葉もなく眺めていた私たちは、やがてまた手をつなぎ、海沿いの遊歩道を歩く。


時折、観光客が写真を撮っている。小さな子どもを連れた家族、肩を寄せ合う恋人たち。


「私ね。」


私はぽつりと言った。


「うん?」


「こういう普通の休日が、一番幸せなんだって改めてわかった。」


「加奈。」


「一緒に笑っていられるだけで幸せ。」


「僕もだ。」


総一郎が優しく笑って、頷いてくれる。


言葉が途切れる。でも、その沈黙すら心地良かった。


「加奈。」


総一郎が静かに口を開く。


「うん?」


「今日は本当にありがとう。」


「私の方こそ。」


「今日、改めて思った。」


「何を?」


「やっぱり僕は・・・加奈といる時間が、一番好きなんだって。」


そう言って、総一郎は照れたように笑った。