Thirty’s

そして、部屋着に着替えた彼女が、リビングに現れると、俺たちは用意してあった缶酎ハイで乾杯する。


「加奈、法案成立おめでとう。お疲れ様。」


「総一郎も移動マーケットシーズンを無事に乗り切って、お疲れさまでした。」


お互いを労ったあと、口にした酎ハイの味は格別だった。そのあと俺が用意した簡単なつまみを食べながら、しばし談笑したあと、俺たちはソファに移動した。向かい合わせから、隣り合わせに席が変わって、ふたりの距離はグッと縮まる。


「総一郎。」


俺の名を呼びながら、身体を寄せて来た加奈を抱き寄せると、彼女は俺の左肩にちょこんと頭を預けて来る。


「やっぱりいいなぁ、これ。落ち着くし、癒される。」


しみじみとした口調で言う加奈に


「そうだな。」


言葉短に答える俺。


「あ~あ、明日がお休みなら、ずっとこうしてられるのにな・・・。」


不満げに言った加奈に


「大丈夫。このGW中の現場応援は、極力断ったから、一緒にいられる時間はちゃんと取れるよ。」


俺が告げると


「本当に?」


目を輝かせて、加奈は尋ねて来た。


「ああ、それにこれからは一緒に過ごせる時間が、もっと増えるかもしれない。」


「どういうこと?」


「今日、仕事が終わった後に所長に呼ばれてさ。どうも本社に異動になるらしいんだ。」


「えっ?」


「まだ確定ではないけど、本社は基本的には土日休みだからさ。今までとは比べ物にならないくらいに生活サイクルは一緒になるはずだから。」


そんな俺の言葉に、加奈の表情は硬くなっていく。