Thirty’s

移動のピークに当たる三月に、動くことが出来なかった人、あるいはそれを避けた人たちが四月に動き、ピークの余韻が尚も続いている我が引っ越し業界だが、それもゴールデンウィークでようやくヤマを超える。


現場はもう一踏ん張りなんだけど、俺たち営業は一足先に一段落。まぁ現場応援は多少入ってるけどね。


そう言えば、さっき加奈の役所が提出していた法案が、参議院を通過したとニュースでやっていた。


俺も大変だったけど、加奈はもっと大変そうだった。身体を壊しはしないかとヒヤヒヤしてたけど、何とか乗り切ってくれたみたいで、まずは一安心だ。


すれ違いの時間が続いていたけど、現場の連中には悪いが、ゴールデンウィークは少し彼女とゆっくり過ごせそうで、楽しみだ。


そんなことを考えながら、帰り支度をしていると、所長が呼んでいるとの声が掛かる。


(また現場応援の追加依頼か?)


内心、ちょっと憂鬱になりながら、所長室に入ると


「おぅ沖田くん、帰り際にすまんな。まぁ、掛けてくれ。」


と上機嫌で迎えられた。いよいよ嫌な予感に駆られながら、腰を下ろすと


「今期の移動マーケットでの我が営業所の実績は、昨年比で二十パーセント増、逆にクレームや事故は過去最低。素晴らしい結果に終わることが出来そうだよ。」


まさしくえびす顔としか言えないような表情で、所長が切り出して来た。