Thirty’s

我が厚労省が提出した法案が、紆余曲折を経ながら衆議院、更には参議院で可決されて成立した頃には、暦は四月も半ばを過ぎ、GWが目前に迫っている頃だった。


「皆さんのご尽力のお陰をもちまして、本日無事に成立いたしました。本当にありがとうございました。」


私たち官僚のトップである事務次官の言葉に、省内食堂の一角に詰めていた面々から拍手が沸き起こる。一つの法案が成立すると、それに関わったメンバ-が集まって、お疲れ様会が開かれるのは、各省とも慣例になっている。


「いやぁ、お疲れ。」


「一時はどうなるかと思いましたが、なんとか四月中に上がってなによりでした。」


そんな声が聞こえてくる。省内で行われているから、羽目を外す人はいないけど、アルコ-ルも振る舞われる席。私はスタッフたちとグラスを合わせ、お互いの労をねぎらう。国会はGWを挟んで、六月中旬まで続くが、私たちが関わる法案はもうない。


「これであとは消化試合、七月を待つばかりですね。」


「まだニヶ月強あるんだから、油断は禁物だよ。」


部下の言葉に、一応戒めるようなことを言った私だけど、実は内心では同意だ。一般職員の異動は四月頭から既に発令されているけど、私たちキャリアは国会が閉じられた後の七月に動くことになる。


だから、そこまでの約二ヶ月は、残務整理や引継ぎ準備の期間。「消化試合」になるというのは、ほぼ一年毎に異動を繰り返しているキャリアにとっては、正直な本音だ。