Thirty’s

それから家事を片付け、身仕度を整えると、彼を追うように、私も自宅を出る。今日は球場で聡志の応援である。


聡志は車で球場へ向かったけど、私は電車。それでもドアトゥドアで1時間は掛からない。


スタジアムに着くと、私のような選手の家族は、関係者通用口から中に入る。スタンドに上がると、お客さんは七分くらいの入り。


スタンドには、顔見知りの選手の奥さんの顔が何人も見え、私は如才なく彼女たちと挨拶を交わす。日本のプロ野球チームには、メジャーのような「奥様会」みたいなものはないけど、それなりの横のつながりはある。


春休みの日曜ということで、お子さん連れの方も多い。ママの腕の中に抱かれて、すやすやと眠る赤ちゃんや、パパの活躍を期待して、興奮を隠し切れない子供たちの姿が目に入ると、思わず胸が痛んだ。


試合が始まった。ファンからの大歓声に送られて、マウンドに立った我が夫は、闘志溢れるピッチングで相手チームの打線をピタリと抑えて見せる。


結局、予定の五回をほぼ完璧に抑えた聡志は、準備万端をファンにアピールして見せた。


マウンドを降りながら、聡志は私が座っているシートの方に、得意満面の表情を向ける。それに応えるように私が拍手を送ると、その姿が見えたのだろう。聡志は嬉しそうに笑って見せると、ベンチに姿を消した。


(ナイスピッチング、聡志。)


私は心の中でそう声を贈ると、彼の帰りを迎える準備をすべく、家路についた。


◇ ◇