Thirty’s

◇ ◇


「あっ、始まったんだ。」


「ああ。」


朝食の片付けを終え、私がリビングに戻ると、夫の聡志がTVに見入っていた。


「ウチの高校は出てないんだよね?」


「春はそれこそ、俺たちが二年の時に出たのが最後じゃないか。」


「そっか、だとしたらもう十三年前の話になるよ。」


「干支一回りじゃ、きかねぇってことか。」


私の言葉に、聡志は思わず苦笑いだ。


画面の中で繰り広げられている春の選抜高校野球大会。聡志は当時二年生ながら、レギュラーキャッチャーとして、チームを引っ張り、見事優勝の栄冠を勝ち取った。そして、その雄姿を私、塚原由夏はスタンドから見守っていた。


「あの時の聡志はかっこ良かったなぁ。」


「なんだよ、今の俺はかっこ良くねぇのかよ?」


「別にそういう意味じゃないって。」


「だいたい、あの頃のお前は松本(まつもと)さんに夢中で、俺のことなんか、眼中にもなかっただろう。」


「そんなことない。確かにあの頃の私は熱狂的な省吾(しょうご)フリークだったけど、でも大切な幼なじみのこともちゃんと見てたし、応援してた。普段、あんなに冷たくあしらわれていても、さ。」


「おい由夏、それは・・・。」


思わぬ反撃を受け、バツ悪そうな表情になった聡志に、私はニヤリと笑って見せる。