Thirty’s

私、桜井加奈(さくらいかな)と唯さんは、母校・明協高校の二年先輩後輩だった。顔くらいは知っていた。でも、在学中にまともに話をした記憶はほとんどない。卒業してからも、顔を合わせたのは数えるほど。


本来なら、すれ違ったままで終わるはずの人だった。


にも関わらず、私たちは因縁浅からぬ関係になってしまった。ひとりの男性を巡って・・・。


沖田(おきた)総一郎。


帰りの遅い私のために、毎晩のようにこうして夕食を用意してくれている人。


そして今も、隣の寝室で眠る私の恋人。彼と同棲を始めてから、もう二年になる。


一方、唯さんは総一郎の元カノ。でも、私が唯さんから彼を奪ったわけじゃない。ふたりの仲を引き裂いたわけでもない。


そういう意味では、


『彼を返して下さい。』


なんて、彼女に言われる筋合いは、本来どこにもない。


だけど


『もうあなたもわかっているはずです。あなたとじゃソウくんは幸せになれないって。』


『彼の優しさに付け込むのはもう止めて下さい、彼を解放してあげて。』


そんな彼女の言葉に、何も言い返せなかった自分が、いる・・・。