Thirty’s

「まぁ、すれ違いを完全に解消することは難しいだろうけど、でも手を伸ばせば触れられる距離に愛しい人がいるって、やっぱり何事にも代えがたいからね。」


大学時代、当時恋人だった今の旦那さんの白鳥徹さんと、やっぱり遠恋だった悠の言葉に実感がこもっている。


「加奈。」


「うん?」


「このまま順調に愛を育んで行ければいいね。」


高校生の時と変わらない、ほんわか笑顔でそう言ってくれた悠のお腹はふっくらとしている。


「ありがとう。」


そう答えた私は


「悠も順調?」


と尋ねる。


「お陰様で。」


「何か月になるんだっけ?」


「八か月。」


「そっか。小さい子二人面倒見ながらじゃ大変だね。」


新聞記者の旦那さんは帰りも遅く、出張も多い。そのため育児も家事もほとんど悠が一人でこなしている。


「妊娠も出産も初めてじゃないし、なんとかなってるよ。それに舞がいろいろ手伝ってくれて、結構助かってる。」


「そうなんだ。」


「だから私は、この子たちに会えたことを幸せだと思ってる。」


「そっか・・・。」


頷いた私が


「二十代でママになるなら、私ももうのんびりしてられないな。」


と言うと


「昔は二十代で生み上げろなんて言われたそうだけど、今はね。そんな時代じゃないし、焦らないでちゃんと段階を踏んで行く方がいいと思うよ。私は加奈はいいお母さんになるだろうなって昔から思ってる。それに私自身は全然後悔してないけど、でも私みたいなパタ-ンはあんまり人にお勧め出来ないからね。」


そう言って、悠は今度はややいたずらっぽい笑顔を見せた。