Thirty’s

『だったら、全然アリだと思うけどな。って言うより、現状を打破する方法って、他になくない?一緒に住めば、さすがに今よりはふたりの時間が作れると思うし、お互いのことをもっと知ることが出来る。メリットしかないと思うんだけど。』


由夏はそれしかないでしょ、とばかりに言って来るけど


「そっか、同棲か・・・。」


ポツリと呟くように言った私は、いかに愛する人とは言え、結婚前に男性とひとつ屋根の下で暮らすことに正直抵抗を覚えていた。それでも、このまま時を過ごしていても、前には進めないことは、間違いなかった。結局、由夏の言葉に背中を押された私は、思い切って総一郎に提案してみた。すると


「賛成、って言うか、実は僕も提案しようかと思ってたんだ。でもいきなり同棲なんて言われても、加奈はやっぱり抵抗あるよなって思ったからさ。」


そんなことを言い出す総一郎。


「なかなかタイミングがなくて、ズルズル来ちゃったけど、さすがにそろそろ私も実家から出ないとまずいかなと思ってたんだよね。」


就職を機に、一人暮らしをしている彼に対し、ずっと親元から通っている私がこう言うと


「そうなの?」


総一郎は少し驚いたようだったけど


「だったら、もう決まりだね。」


すぐに笑顔になった。


「うん。」


そう言って、彼と笑顔を交わし合った私は、さっそく両親に了解を求めた。


父親はあまりいい顔をしなかったが、それでも将来を真剣に見据えてのことだと、最終的にはわかってくれて、私は二十八歳にして家を出た。