Thirty’s

「ごちそうさまでした。」


朝食を済ませて、立ち上がった私が、食器を片付けようとすると


「そのままでいいよ。」


総一郎が言ってくれるから


「ありがとう。」


彼にそう言って、ダイニングを出る。慌ただしく身支度を整え


「行ってきます。」


バタバタと玄関ドアに向かう私を


「行ってらっしゃい。」


総一郎は見送ってくれようとして、一緒にドアの方に歩いて来る。


「今日はどうするの?」


「洗濯だけ終わらせたら、映画でも見に行こうかな?」


「洗濯は週末に私がやるから、気にしないで今日は羽を伸ばして。」


「ありがとう。」


こうして家を出た私。十分程の最寄り駅への道をやや急ぎ足で歩きながら


(ああは言ってくれたけど、きっと彼は洗濯だけじゃなく、掃除も、他の家事も済ませてしまう。そして当たり前のように、私の夕飯まで作って待っていてくれるはずだ。映画に行くなんて言ったのも、たぶん私に気を遣わせないため・・・。)


そんなことを思い、胸はズキリと痛む。


『大丈夫、相身互いじゃないか。』


そう言って、温かく笑う彼の顔が浮かぶ。確かに、私だって全く家事をしてないわけじゃない。今日とは逆に、彼を送り出す日もある。だけど、その負担が圧倒的に彼の方に偏ってしまっているのも、また間違いない事実。


思わず小さく息をつく。


それでも足は止められない。