Thirty’s

「ブラック過ぎませんか?今どき、元祖ブラックの引っ越し屋だって、そんな遅くまでなんてありえないし、まして女子が・・・。」


「今は男女等しく、業務を任され、こなさなければならない時代なんだ。彼女の職場は、まさに時代の最先端を行ってるんだよ。」


多少の皮肉を込めて、俺が答えると、平山は思わずため息をついた。


「どんな仕事をしてるのか知りませんが、デートとか出来てるんですか?」


「こっちが平日休みで、向こうが土日休みなんで、なかなか時間が合わないからなぁ。この前、一緒に出掛けたの、いつだったかな・・・?」


「なんすか、それ?付き合ってる、一緒に住んでる意味あるんすか?」


呆れたような声を出した平山に、思わず厳しい視線を向けてしまうと


「すいません。差し出がましいことを言ってしまって・・・それじゃ失礼します。」


バツ悪そうにそう言った平山は、そそくさと立ち去って行く。その後ろ姿を、なんとも言えない気持ちで眺めていた俺は


「平山がああ言いたくなるのも無理はない。一緒に暮らしているにも関わらず、加奈の寝顔しか見られないなんてざらだからな。とんでもねぇ職場だよなぁ、加奈の職場は・・・。」


そう独り言ちたあと、ひとつため息をついた。