Thirty’s

そう、先輩はやがてお父さんである大臣の後を継いで、選挙に出て、政治家となる。そんな未来が約束されている。彼が省内で耳目を惹く存在なのも、そんな出自があってのことだ。普通の大臣政務秘書官とはやはり違うのだ。


そんな彼と職務を超えた接触をしていれば、周囲に好奇の目で見られてしまうのは当たり前だろう。でも


「プライベ-トと言ったって、ご存じの通り、平日は私は残業三昧。週末は秘書官は大臣に着いて、地元廻り。それでいつ会うのよ?それをわかってて、あの人は言ってるの。だいたい知ってる?ウチの大臣みたいな地方選出の政治家の奥さんは、地元出身のそれも有力者の娘じゃなきゃ務まらないの。都会から来た余所者の女なんて、地元に受け入れてもらえないから、票にならない。」


「そうなんですか?」


「そう。他ならぬ先輩が、学生時代に周りに言ってたもの。『俺は地元から嫁を貰わなきゃならない。だから、色目使ってもムダだぜ』って。」


「なるほど、そんな世界なんですか。」


「それに、何度も言ってるけど、私、ちゃんと将来を誓い合った人がいるから。さ、行くよ。」


そう言って立ち上がった私。


そう、私には愛する人がいるのだ。本当のことなのに・・・胸の奥がギュッと痛んだ。