Thirty’s

それから私たちは、傍から見れば、和気藹々と昼食を共にしていたが、少しすると先輩の携帯が鳴り出した。待ち受け画面を見た先輩は


「・・・親父だ。」


と言いながら、苦い表情で電話に出た。


「はい・・・今、まだ食事中です・・・はい、そうなんですか?わかりました、じゃ戻ります。」


大臣と短い会話を交わして、電話を切った先輩は


「なんか地元の事務所から連絡があって、処理しなきゃなんないことが出来たらしい。じゃ、俺行くから。」


と言うと、食器の乗ったトレ-を持って、立ち上がろうとするから


「一緒に片付けておきますから大丈夫です。急いで戻って下さい。ご馳走様でした。」


私が言うと


「おぅ、サンキュ-。じゃ、加奈ちゃん、今度はプライベ-トでな。」


そう答えて、私にニヤリと笑い掛けると、先輩は足早に食堂を出て行く。その後ろ姿を少し見送ってから、私はひとつ息をついた。


「係長、完全に狙われてますね。」


すると、横からこれまたニヤケ顔で茉莉が言って来る。


「だって、こんな風に秘書官から誘われるの、係長だけじゃないですか?おかげで私は、そのおこぼれに預かってますけど。」


「サークルの先輩、後輩だからね。」


「またまた。今度はプライベ-トでって言ってたし。」


「それもいつもの常套句じゃない。」


冷めた口調で返す私に


「正直どうなんですか?秘書官と結婚したら、代議士夫人ですよ。」


興味津々という態で、更に茉莉は聞いて来る。