「……あーあ、なんで蒼葉なのかなー」
「お、お前らっ……!」
「夢莉くん!?」
近くにある鹿のオブジェから顔を出した夢莉くんに蒼葉くんと私は顔を赤く染めた。
そして、ぞくぞくと顔をのぞかせる面々。
「盗み聞きしてたけど、僕たちより一歩、蒼葉がぬきんでちゃってたみたいだね」
「オレよりちょっとだけですけどね、多分!」
「……すみれがぼくらのことを可愛がってくれてるのは、弟目線なんだって、なんとなく思ってたけど……けどね!ぼくは絶対あきらめないから」
私たちを囲うように三人が歩み寄ると、
「まさか蒼葉くんの告白シーンを見ることになるとは思ってなかったけど……これはこれで燃える展開になってきたかな。僕としては」
橙果くんも笑みを見せながらも凛々しい顔付きで歩いてきた。
告白を聞かれていたことに蒼葉くんは、大きく息を吐き顔を手でおおった。
「……ったく」
私もまさか皆がいるとは思ってなかったからつい背を向けるも、
「はい、手つなぐの帰りはオレの番!それにオレもすみれのこと好きだし!だーいすきだから、オレも弟枠から昇格してみせるんで!」
へへ、と笑う太陽くんに今度は手を握られた。
そしてもう片方を繋ぐのは、自分だ!と太陽くんをのぞいた四人が騒ぎだす。
「……もしもーし、みなさーん?もうこのままオレがすみれをエスコートしちゃうんで、ご心配なくー」
「は?お前俺の告白聞いた上でそれか、ふざけんな」
「告白とか関係ない関係なーい!ぼくの手はすみれと繋ぐためにあるの!」
「僕も手冷たくなったから繋ぎたい」
「すみれちゃんを赤くするのは僕だけで十分だと思うんだよね」
やいのやいの、と静かで綺麗なイルミネーションの中、五人の小さなにらみ合いは続いた──



