花系男子はアナタっ子


……あー本当に良かった。もう布団入ったら朝まで一回も目あけないようにしよう。そしたら眠れる──?

今なんか人影があったような……寝不足で目がぼやけたかな。

目を擦りながら部屋の取っ手に手をかけた時、ドサッと階段の方から聞こえてきて──先生かも、なんて思いつつも私は覗いた。


「え、蒼葉くん?」

「っ……お前、いつの間に」

階段に座り込む蒼葉くんは、声をかけると驚いたのか、すぐに顔を上げた。
そして、どうしたのか聞く前に、蒼葉くんの顔色を見て私はさとった──林間学校と似たことが起きているのだと。

だからすぐ近くに駆け寄り、蒼葉くんの前にしゃがみこんだ。

「……大丈夫?そっちのソファに横になる?」

廊下にあるソファを指差すも、蒼葉くんは首を横に振った。

「お前がもっとこっちに、来てくれたらそれでいい」

なら隣に座ればいいのかと、立ち上がったけど、

「……違う」

「え?──っ!?」

ぐっと腕を引かれ、私はすっぽりと蒼葉くんの腕の中におさまった。
ぎゅっと力を込められ、私は手を泳がすも、離れるわけにはいかないから、そっと蒼葉くんの背に手をひかえめに回した。

「ど、どう?具合は」

「まあまあ……それにしても、お前何でこんなあっついの?」

「え……!?」

蒼葉くんが抱きしめるから──って理由しかないんだけどな。

「ははっ、でもすげぇ落ち着く。この感じ」

肩に顔を埋められ、私の体温はきっともっと上がってる。

「……開花時期、のせいだよね?」

「ああ……俺は双子や太陽みたいに、なつっこいわけじゃないし、自分の気持ちをすぐ言葉にできる性格じゃない。だから……こういう状況をまねいた」

やっぱり──私がもっと気にかけてれば。

「お前は何も悪くない。俺が自分の異変に気づいて、もっとお前のそばにいれば良かっただけだ」

蒼葉くんの言葉は、まるで私の思ってることを見透かしたようなもので。
小さく頷き返すことしか出来なかった。