楽しかった夏休みはあっという間に過ぎて、鳳仙も新学期がスタートした。
結局、私たちは海だけじゃなくてプールにもお祭りにも行ったし、花火もやった。
おかげでたくさん写真も撮れて、もう圭哉さんに偽カップルだと疑われることもなさそう。


「ねぇ一花」


朝玄関でローファーを履いているとお母さんが見送りに来てくれた。


「なに?」


「もしかして彼氏できた?」


「いないいない!いるわけないじゃん!」


「そうなの〜?彼氏じゃないなら、好きな人とか?」


「……なっ、なんで急にそんなこと」


「ん〜母親の勘かな?」


「何それ。残念ながらハズレだよ」


母親の勘、恐るべし……。
嘘、ほんとは自分でも気づいてる。
最近は何をしていても大我のことを考えてるから。
「これ大我も好きそうだな」とか、「ここ今度大我と行きたいな」とか。


私は多分大我のことが好きなんだ——。