捨て台詞のように図書室をあとにして、スタスタと教室への廊下を歩く。
「(……やっぱり薄氷は、よく分からない)」
普段は何もないように普通に話してくれるくせに、わたしが推しを語ることを良しとしない。
会えば毎回同じ言い合いをくりかえしている気がする。
そしていつも、どちらかが話を終わらせて、次会うときもどちらかが話をはじめて。
折れたことなんて、互いに一度もない。
『ばかオタク』
「(読書オタクに言われたくないんですけど)」
オタクなのを否定するわけじゃない、むしろ喜んで受け入れよう。
ーーだけど、彼の言葉はいつとわたしの唇を不満げに結ばせる。
「(仕方がないじゃん、推しが好きなんだから、)」
こう思ったのも、もう何回目か。
十回目かもしれないし、二十回目かもしれない。
どちらにせよ、何回言葉を交わしたとしても、薄氷櫂吏という男と交わることは一生ないんだろう。



