◇◇


「やっっと、買えた……!!」

まだ朝のホームルームが始まる前、すでにわたしは今日が終わりに近づいたような満ち足りた気分だった。

はわわ、と頬が紅潮して興奮が冷めない。
ぎゅっと指同士をからめて、思わず拝むように手をあわせる。


……ついに、ついにこの日がやってきたんだ。



嬉しすぎて目がキラキラとしている自覚はもちろんある。


じーんと胸に響くものは、達成感。


机にちょこんと置かれているものは、今まさに拝まれているもの。わたしはそれをそっと持ち上げた。



「ーー数量限定カイトくんぬいぐるみ……!」



教室全体にわたしの熱のこもった声が響く。いや熱というよりも"愛"と言った方が正しいかもしれない。


とにもかくにも大きい気持ち。

でも愛なんて言葉じゃ語りきれない、そんなのじゃ足りないくらい。


手のひらからは溢れ、腕の中がぴったりの大きさのそれを丁寧に抱きしめる。



「っはああかっこいい最高!」



花宮 絵菜、十六歳の高校一年生。

今朝、宝物をゲットした。