きみとロマンスなんて



声を荒げたくなるのは仕方がない。
しかし場所が場所であるため、静かに怒りを込めた声で男に問う。


薄氷は何も答えず、ただわたしを見つめるだけ。
色素の薄いグレーっぽい瞳は何を思っているのやら。

……この男とわたしは、やっぱり相容れないらしい。



「……薄氷はいーっつも本ばっか読んでるからそうなるんだよ」

「は?」

「毎回毎回わたしが推しのことを語るのに言葉を挟むのやめてくれない?」

「お前の話は聞き飽きた」

「愛は不滅でしょ」

「耳にタコできそうなんだけど」

「なあに、カイトくんの話が足りないって?」



にっこりと笑うと、薄氷はハァと息をついて左耳へと手をやった。


知ってるんだからね、そこに小さなピアスが隠されていること。


以前その仕草を見かけて、薄く光に照らされたきれいな紫の輝きを発見したのは記憶に新しい。


黒髪によく映える小さな煌めきが似合っていたとは、ぜったい口にしないけれど。


たいてい教室では本を読んでいる彼に、静かな光芒があることを一体何人のクラスメイトが知っているのだろうか。