「…悩みっていうのは、これのことだったのか?」


「はっ…はい、すっかり、大我(たいが)先輩が優衣(うい)先輩のことを好きだと、思いこんでしまって…」




 大暴れする心臓を抱えながらうなずいて答えると、大我先輩は「俺は真陽(まひる)が好きだ」とあらためて言ってくれる。

 ドキドキしすぎるから、そのお顔で軽率(けいそつ)に好きだとか言わないで欲しい。

 私は“彼氏”になってくれた大我先輩を見つめて、興奮のあまり目をうるませた。


 片手で口を押さえながら、校章をにぎった手を差し出して、もう一度大我先輩に言う。




「これ、どうぞ。私、大我先輩に勝てる気がしませんので…!」


「…」




 大我先輩は私の背中を支えたまま、手のひらの上にある校章に視線を落として、人差し指と親指でつまみとった。