顔の横にせまるスニーカーが目に入っているのに、腕が重くて防御が遅れる。

 一緒に顔も背けながらなんとか上段蹴りに耐えると、足を引いた大我(たいが)先輩が中段をねらってこぶしを構えた。

 それは見える。見えるのに…。


 どうして体がついてこないの?


 …なんて、心のどこかでは分かっている。

 優衣(うい)先輩みたいに、かよわい女子のほうが好きになってもらえるんじゃないかって、思ってしまうから。




「っ…」




 みぞおちに食いこんだこぶしに息が詰まって、いつもはかんたんにたおされたりしないのに、衝撃に押されるようにしりもちをついてしまった。

 大我先輩は私の前にたたずんで、「どうした?」と声を落とす。




「こんなものじゃないだろ」


「…っ」