少し離れて立ち、おたがいに向き合うと、大我先輩はボクシングのようにかまえる。
私も基本のかまえをとって、数秒間視線を交え…先に動き出した大我先輩に合わせて、距離を詰めた。
まずはワンツーから、と左こぶしを突き出すと、大我先輩は防御のかまえをとる。
左手を引いて右こぶしを突き出せば、先輩は受け止めきったうえでカウンターのこぶしを振り抜いた。
私もダメージを食らわないように工夫して防御したあと、正拳突きからの回し蹴りを入れる。
「…」
片腕で防御した大我先輩のするどい瞳と視線が交わって、下から突き上げられたこぶしを、半歩うしろに下がって避けた。
そのとき、本当に不意に。
校庭に面した教室の窓に、ミルクティー色の髪が見えて、視線が上に吸われる。
4階の教室で、遠藤先輩に笑いかけている優衣先輩が見えたとき、私の体はズンッと重くなった。



