「た、大我先輩っ!」
「寺岡、に…笹森、だったか。これはなんだ?」
不意打ちの顔面国宝は心臓に悪い、と赤面しながら、気絶したままの変態男を見る大我先輩に答える。
「あぁ、その男が女子トイレに入りこんで優衣先輩をおそっていたもので…」
「…なに?大丈夫か?」
大我先輩は眉をひそめて優衣先輩に目を向けた。
けがの有無を確認するように視線をめぐらせる様子を見ながら、私も優衣先輩を見る。
「あ、う、うん。真陽ちゃんがすぐに助けてくれたから…」
「そうか…なにかあれば俺も力になる。えんりょなく頼れ」
「え…あ、ありがとう、仁木くん」
大我先輩が優衣先輩にやさしい言葉をかけるのを聞いて、胸がもやっとした。
“えんりょなく頼れ”なんて、私、言われたことない…。
って、別に守ってもらう必要なんてないんだけど、私は。



