「おい、どこ見てんだよ。やるか?あ?」


「あ?ぶつかってきたのはお前だろうが」




 廊下の先で男2人がケンカしそうな雰囲気(ふんいき)になっているのを見つけて、私は声を張った。




「そこ!ケンカはやめなさい!なぐり合いなんてもってのほかですよ!ぶつかってしまったならおたがいにあやまりましょう!」


「…悪かった」


「いや、こっちこそわりぃ…」


「そうです、おたがい悪意なんてないんですから。あやまれてえらいですよ」




 にっこりと笑ってほめると、男たちは少しほおを赤くして顔を背ける。

 …と、まぁ、こんなふうに、言うことを聞いてくれるようになったのも事実で。

 これが“強者にしたがう”という不良の流儀にそってしまっていることだけが、本当に複雑。


 力で言うことを聞かせるなんて、不良と変わりがなくなってしまうから。

 私はため息をこらえて「おはようございます」と教室に入った。