体育館のなかでくり広げられている乱闘におどろいたあとは、ふつふつと怒りがこみあげてきた。
これだから不良は…きらいなの!
「ちょっと!むやみやたらになぐり合うなんてっ、力は正しく使うものでしょう!?」
「あ、きみ――」
空手道場をいとなむ父の教えを口にしながら、私は乱闘さわぎの中心へ割って入っていく。
そのせいでほうぼうから飛んでくるこぶしや足は、腕や足で受け止めたり、体勢を低くしたり、半身になったりと、かわしてやりすごした。
そのたびに、ショートカットの髪が左右にゆれる。
「やめなさい!こぶしは理由なく振るうものではありません!」
「あぁ?なんだお前。女が入ってくんじゃねーよ!」
中心のほうにいた男は私を見るなり顔をしかめて、にぎりしめたこぶしを顔に向かって振り抜いてきた。
私は左腕を顔の前に上げながら、横にずれてこぶしを受け流し、にぎりこんだ右こぶしで正拳突きをする。