「わ、私、今日は急ぎの用事があるので!失礼します!」


「待て――!」




 私は教室から走り去って、高校に通うために1人で引っ越してきたマンションへと逃げ帰った。

 ちょっと道に迷って時間がかかったけど、確かに私の新居へ帰ってきた――はずが。




「た、大我さま…?どうしてここに…」


「…俺はただ、自分の家に帰ってきただけだ。お前こそ、どうしてうちの前にいる?」




 マンションの廊下(ろうか)でばったり大我さまとはち合わせて、私は思いっきり目を見開いた。

 “自分の家に帰ってきた”って…?




「え…だって、ここ、私の家なので…」




 私は503号室と書かれた自分の家を指さす。

 大我さまは私の指の先に目を向けて「寺岡(てらおか)、ま…?」と用意したての表札を読んだ。




真陽(まひる)、です」