「い、イケメンさま…!」
「…イケメンさま?」
教室の前に立っているイケメンさまは、理解できない外国語を聞いたときのように、きょとんとした様子で私を見た。
「はっ、い、いえ、正しくは顔面国宝さまだとは分かっていますっ、でも、私もやむにやまれぬ事情でイケメンさまとは相容れない立場にあり…っ!」
イケメンさま、とスケールダウンした呼び方で妥協しているんです!と目をつぶって言い切ると、あたりが、しん…とする。
「…よく、分からないが。俺は2年3組の、仁木大我だ。お前にタイマンをもうしこむ」
「え…すみませんが、おことわりします」
いくらイケメンさま…大我さまのお言葉でも、不良との野良試合はちょっと。
大我さまは眉根を寄せて不満をあらわにしたものの、不機嫌なお顔もかっこいい…じゃなかった、暴力行為には付き合えない。



