ごくりとつばを飲みながら舞台上の男を見つめると、彼は私たちを見渡すように視線を動かして、右手の親指を自分に向けた。
「お前たちは、この俺、吉田強二に挑める。滝高最強を名乗りたいなら、がんばることだ」
いや…どんなルール…?
校章をうばうって、先生方はこんなあいさつを聞いてなにも言わないの?と、壁ぎわにならんでいる先生方を見れば、素知らぬ顔をしている。
どうやらここ、滝戸高校は、不良の温床に間違いないらしい。
空手での推薦しかねらってなかったばっかりに…入学内定が白紙になってあわてて受験した結果が、すべり止めしか受からないなんて…!
いくらねむくなる行為とは言え、やっぱり勉強ってしておくものなんだ…!
自分の成績の悪さがうらめしい!
大きらいな不良にかこまれた高校生活が決定したことに、私は心のなかで涙しながら、進行していく入学式を最後まで聞き流した。



