私、寺岡(てらおか)真陽(まひる)は望まない高校の入学式に参加するために、体育館集合という案内にしたがって、式の10分前に、体育館へ入ったはずだった。

 紅白幕(こうはくまく)でかざりつけられた体育館の壁、舞台につり下げられた入学式の文字幕。

 そこまではいかにも普通の入学式といった様子で、ここが無人なら、私の暗い気持ちはいくらか晴れていたかもしれない。


 ――だけど。




「な…なんですか、これは…っ!?」


「オラァ!」


「すきあり!」


「次のやつ、かかってこい!」




 ひびく怒声(どせい)、学ラン姿でなぐり合う男たち、壁ぎわには死屍(しし)累々(るいるい)――は、言いすぎだけど。

 負傷(ふしょう)した様子で座りこんだりたおれたりしている男たちを見回して、私は目と口を大きく開いてしまった。


 学費も偏差値も最低レベルの滝戸(たきど)高校。

 不良だらけといううわさの、その学校の実態を…私はなめていたのかもしれない。