【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



 眉をひそめて私を見た仁木くんがうなずいたのを見て、ほっとする。

 ケンカなんて挑まれたら、私、逃げることしかできないよ…。




「だが、俺が欲しいのは校章じゃなくて、あんたに勝ったっていう――」


「あのね、一番強いやつに勝てば最強って証明できるんだよ。覚えておきな、不器用くん?」


「…遠藤先輩は、吉田(よしだ)強二(きょうじ)さんに負けたことがあるんですか?」


「うん、負けたよ。病院送りになった。だからいいでしょ?別に俺とは戦わなくて」


「知暖先輩…」




 “負けた”って…強二さんは、知暖先輩に負けたって言ってたのに。

 それに病院に行ったのも、“邪魔(じゃま)”が入ったからじゃ…?

 思わず知暖先輩を見ると、先輩は私を見てほほえんだ。


 わざと、うそをついてるのかな…?




「…大我先輩、とりあえず吉田強二さんに挑みましょう」


「…分かった」