【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「優衣…どうして俺と凛恋さんが付き合った、なんて思ったの?」


「っ…昨日の、夜…私、見てしまって…」


「…そっか。ねぇ、顔上げて?俺、それで優衣に避けられるのはこまるんだ。俺が好きなのは、――優衣だから」


「…えっ?」




 知暖先輩は両手で私のほおを包んで、ゆっくり顔を上げさせる。

 大きく目を開くと、涙がこぼれ落ちた。

 知暖先輩は眉を下げてほほえみ、親指で私の目の下をぬぐう。




「泣かせちゃってごめんね。凛恋さんとはなにもないよ。キスは止めたし、告白もことわった」


「ことわ…ったん、ですか…?」


「うん。俺は優衣が好きだから、凛恋さんの気持ちには(こた)えられないって」




 やさしく見つめられて、ドキドキと鼓動が加速し始めた。

 “優衣が好き”って…聞き間違い、じゃないよね…?