「え…遠藤、サン…!」
「いや、俺らはただホゴしてあげようと思って…っ?」
不良男子たちはとたんに顔をひきつらせて、ぎこちない笑顔を浮かべながらゆっくりうしろに下がる。
腕を解放されてほっとしていると、うしろから肩を抱かれた。
「言いわけとかいいからさ。さっさと消えな」
「「は、はいっ!」」
知暖先輩の低い声を聞いて青ざめた不良男子たちは、廊下の奥に走り去っていく。
知暖先輩の手が肩から離れたあとも、私は先輩を見ることができず、うつむきながら口を開いた。
「ありがとう、ございます…1人で出てきて、すみません…」
「…ううん」
私に答える知暖先輩の声は、いつも通り穏やか。
でも、「優衣」と名前を呼ばれると、びくっと私の肩が跳ねる。



