仁木くんは知暖先輩がいることを分かっていたかのように、動じることなく先輩を見上げて言う。
知暖先輩は眉を下げてまっすぐ私を見ていて、私はすぐに視線を落とした。
「ごめんなさい…っ、仁木くんもごめん…!」
「笹森?」
「待って優衣、1人じゃ――」
私は仁木くんの手を外して、2人に背中を向けるように階段をかけ下りる。
トイレ…じゃ、やっぱりすぐ見つかっちゃうかも。
どこか、不良男子がいない場所に隠れていよう…!
私は1階に下りて、あたりをきょろきょろと見ながら、廊下を小走りに進んだ。
「あ?うわさの転校生じゃねぇか」
「1人なんてラッキ~。鬼も近くにいなきゃ怖くねぇってな、ハハッ!なぁ、俺たちと遊ぼうぜ」
「え…す、すみません…っ」



