長いチェーンがたれ下がったピアスを右耳につけている彼は、肩に羽織(はお)った学ランのすそと、ピアスのチェーンをゆらしながらこちらに歩いてくる。

　ぽかんと、芸能人みたいに整った顔に見惚(みほ)れていると、私の目の前まで来た彼はやわらかくほほえんだ。




「こんにちは。滝高にようこそ。ちょっと聞きたいんだけど、きみ、格闘技かなにかやってる？」


「え……？　い、いえ……」




　このイケメンな人、誰だろう……？

　とつぜん聞かれたこともよく分からなくて、不安を抱えながら答えると、イケメンな男の人は眉だけを下げて、気遣うように私を見る。




「そっか。じゃあ、いかつい連中にかこまれて怖かったかな？」


「あ……はい……」




　思わずすなおに答えてしまってから、ハッとして「あ、い、いえっ」と答え直した。

　あわてて周りを見たけど、不良男子たちは怒るわけでもなく、どこか居心地が悪そうな様子でイケメンな男の人を見ている。