【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「待って、優衣――!」




 うしろから聞こえる知暖先輩の声に胸を痛めながらも、私はかけ下りるように階段を下っていく。

 休み時間が終わるまで、どこで時間をつぶそう?やっぱりトイレが安全かな…?

 視線を落として考えごとをしていたせいで、前に人がいたことに直前まで気づかなくて、私はおどり場でどんっと男子にぶつかってしまった。




「あっ、ご、ごめんなさい…!」


「いや…、笹森(ささもり)?」


「え…?あ、仁木(にき)、くん…」




 名前を呼ばれたことにびっくりして男子の顔を見ると、私がぶつかってしまった相手はどうやら仁木くんのようで。

 不機嫌そうに見える顔つきにやっぱり緊張(きんちょう)しながら、もう一度「ごめんね」とあやまる。




「…1人なのか?遠藤(えんどう)知暖(ちはる)はどうした?」


「えっと…お手洗いに行こうと思って。すぐ真陽(まひる)ちゃんのところに行くから大丈夫、って」