【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。

「外野の、邪魔…?」


「昔の話だよ」


「1年の、冬の終わりのことだ。俺は当時、学年最強と言われていた知暖に勝負を挑んだ。だが、こぶしを(まじ)えて俺の負けを薄々さとったとき、あそこから」




 強二さんは校舎のほうを向いて、3階の教室を指さした。




「俺たちの共倒れをねらった2年が、机を投げてきた。知暖は俺をかばって机の下敷きになり…肩に、後遺症が残ったんだ」


「えっ…!?」


「大したものじゃないよ、ちょっと動かしづらくなっただけ。日常生活は充分に送れる」




 勢いよく知暖先輩を見ると、当の先輩は笑って自分の右肩をぽんぽんとたたく。

 そんなことして大丈夫なのかな…っ。




「それでも…まだ俺と互角(ごかく)に戦えること、知っているぞ」


「どうかな。まぁ、それなら俺を心配する必要もないって分かるでしょ?」