【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「――む、遅かったか…」


「あれ、強二。どうしたの?」


「あ…」




 そのとき、昇降口(しょうこうぐち)から体格のいい強二さんが出てきて、知暖先輩ともども、強二さんに顔を向ける。

 ぺこっと会釈(えしゃく)すると、強二さんは私にうなずき返しながら知暖先輩に近づいた。




「窓からこいつらの姿が見えたから、急いで来たんだが。俺は必要なかったようだな」


「ははっ、俺もひよわじゃないからね」


「あぁ、知ってる。知暖は俺よりも強い、まさしく最強の男だからな」


「え…?」




 強二さんよりも強いって…滝戸高校のトップは、強二さんなんじゃないの…?

 きょとんとする私をちらりと見た強二さんは、眉根を寄せて目を伏せる。




「俺は実質、知暖に負けたんだ。あのとき――外野の邪魔(じゃま)が入らなければ」