「そ…その…」
「あ?なんて?」
「…っ」
「――あ~あ~、さっそく全員でかこんじゃって。はい、解散」
やさしげな低い声が廊下のほうから聞こえたと思ったら、パンと手をたたく音がした。
私の周りにいた不良男子たちはいっせいに振り返って、ひきつった顔をする。
「え、遠藤さん…!」
「俺、転校生の子に用があるからさ。道空けてくれる?」
「「は、はい……」」
おだやかな声なのに、不良男子たちは波が引くように私から離れていった。
あっさりと解放されたことにおどろきながら、私は教室の入り口に目を向ける。
そこにいたのは、長めの赤いくせっ毛に緑色の瞳をした、やさしそうな顔つきの男の人だった。



