【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「うわ、すごい。(いろどり)りが豊かだね。優衣って料理得意なの?」


「はい…もともと自分でお弁当を用意してましたし、家で家族のごはんを作ることもあったので、味は悪くない、と思います」




 ふつうに食べられるくらいには。

 自分のお弁当箱も開けながら、ドキドキして横目に知暖先輩を見ると「いただきます」とさっそく玉子焼きが口に運ばれる。




「んま」




 口元を押さえながらこぼされた一言が、飛び跳ねたいくらいうれしくて、顔がだらしなく緩んだ。

 横目に私を見た知暖先輩は、目を見張って、妖艶(ようえん)に瞳を細めながら、じぃっと私を見つめる。

 もぐもぐとそしゃくしてのど仏をごくりと動かしたあと、知暖先輩はやわらかくほほえんで口を開いた。




「おいしいよ、ありがとう。…ねぇ、優衣、彼氏いるの?」


「えっ?い、いえ、彼氏なんて、そんな…!」


「ふぅん?それはよかった」