【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「今日の昼休み、楽しみだったんだ。優衣が作ってくれた弁当、早く食べたいな」




 昼休み、昇降口(しょうこうぐち)からグラウンドに続く、ミニ階段にて。

 トイレ事件以降、不良男子たちからさらに遠巻きにされるようになった知暖先輩が、にこにこと笑いながら言う。

 明らかに不良男子たちから恐れられてるように見えるのは、あの日、私を強二(きょうじ)さんにあずけて離れていたあいだに、なにかしたからなのかな…?




「そんなに、大したものではないですけど…」




 外でお昼を食べるきっかけとなった気持ちのいい青空の下で、私ははにかんで白いYシャツ姿の知暖先輩にお弁当を渡した。

 いつも肩に羽織(はお)っている学ランは、今私のおしりの下に敷かれている。

 知暖先輩の好意の結果だけど、ちょっともうしわけないな…。


 お弁当を受け取った知暖先輩は、ぱかっとふたを開けて表情を明るくした。