【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



 無表情で冷たく言う知暖先輩から静かな怒りを感じる一方で、私に向いた瞳が気遣うようにやわらかいまなざしへと変化して、胸がキュンとする。

 私のために、こんなに怒ってくれるなんて…知暖先輩は凛恋(りこ)さんの彼氏になる予定、って言われたけど、私…。

 知暖先輩のこと、好きになってるかも…。




「…だ、大丈夫です。本当に、真陽(まひる)ちゃんがすぐ助けてくれたし…っ。これくらい、すぐ治ると思いますから」




 凛恋さんにもうしわけなくて、知暖先輩の手からするりと腕を引いて、そでの下にアザを隠しながらほほえんだ。

「教室に戻りましょう」と知暖先輩の横を通って階段を登ろうとすると、うしろから抱きしめられて心臓が跳ねる。




「俺が守るって言ったのに、本当にごめん…その腕、保健室に行って冷やそう?」


「っ…は、はい…」