段差のとちゅうに腰かけていた知暖先輩は私に気づくと、にこっとほほえんでくれる。
「おかえり、優衣」
「お待たせしました…」
さっきのこと、ちゃんと話したほうがいいよね…?と視線を落として考えていたら、先に知暖先輩の声が聞こえてきた。
「どうしたの?…もしかして、なにかあった?」
「あ…えぇと、その。実は、トイレのなかで男子に待ち伏せされていたみたいで…」
と、視線を上げて口にした瞬間、知暖先輩は眉根を寄せて近づいてきて、私の左手をすくいとる。
右手が取り残されるように落ちてから、無意識に手首に触れていたことに気づいた。
「このアザ…そいつにつけられたの?」
「え…?」



