1階の階段で足を止めてほほえむ知暖先輩に、毎回ついてきてもらうもうしわけなさを感じながら頭を下げたあと、私は1人で廊下を歩いていった。
静かな廊下に1人分の足音をひびかせてトイレに入ると、私は大きく目を見開く。
「えっ…?ん――!」
「静かに。乱暴なことはしねぇ、ちょっと俺と話そうぜ?」
女子トイレのなかに不良男子がいたことにおどろいた次の瞬間、私は不良男子の手で口と鼻をふさがれて、一切声を出せなくなった。
ぞわっと恐怖心が湧き上がって両手で不良男子の手を離そうとすると、左腕の手首をぐいっとつかまれる。
「大人しくしてくれよ、じゃないと“乱暴”しちまうだろ?」
「――!――!」
にやぁっと笑う不良男子が怖くて、じわりと涙が浮かんできた。



