【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。

「あ、はい、どうぞ…」




 それから知暖先輩が電話をかけた相手は、例の“凛恋(りこ)さん”で。

 話が知暖先輩の想定していない方向に転がっていったんだろうな、っていうのは、電話しながら困惑(こんわく)している様子からさとったんだけど。

 知暖先輩が電話をかけてから10分後に、ピンポーンとインターホンを鳴らしてやってきた美人なお姉さんを前にして、私は戸惑(とまど)うしかなかった。




「やっほ~、知暖くん。その子が知暖くんが拾ったっていう女の子?」




 頭の形にそった、暗い紫色のショートヘアに、赤いつり目の女の人。

 にこっと知暖先輩に笑ってみせた凛恋さんは、口角を上げながらじろじろと私を見る。




「拾ったって…優衣は犬猫じゃないよ。凛恋さん、本当にうちに泊まる気?」


「ふーん、優衣ちゃんって言うんだ。紀香(のりか)が家出て知暖くん1人になるんでしょ?高校生で1人暮らしって大変だし、あたしがお世話してあげるよ」