【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



 知暖(ちはる)先輩と一緒に歩いてやってきたのは、マンションの1室。

 最上階の、612と書かれたその家のなかでは、衝撃(しょうげき)の事実が待っていた。




「“彼氏と同棲(どうせい)始めるから1人でがんばってね、知暖。ちょくちょく必要な物取りに帰るよ~”って…急すぎでしょ」


「え…えっと…」




 ダイニングのテーブルに置かれていたメモを持ち上げた知暖先輩は、中身を読み上げて顔を引きつらせる。

 つまりは、お姉さんがちょうど今日から家を出ていっちゃった…ってこと?

 おろおろして、きれいに片付けられている家のなかに視線をただよわせると、知暖先輩がため息をついた。




「はぁ…ごめん、優衣(うい)。滝高って一応共学なんだけど、あの通りほぼ男子校だから、俺、あんまり女の子の友だちいなくて…」


「い、いえっ」


「優衣を泊めてって頼める人が…あぁ、そうだ。ちょっと電話してもいい?」