【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。

 たまに紙の地図を見て道を確認しながら20分歩くと、アパートに着いた。




「あ、ここです。送ってくださってありがとうございました」


「…え、本当にこのアパート?」


「は、はい…」




 ぽかん、とした顔で目の前の古びたアパートを見ている知暖先輩は、アパートを見つめたまま、私に聞いた。




「…優衣は、ここがお嬢さま学校の寮だって信じてたの?」


「う…そ、その、私みたいな庶民(しょみん)はこういう寮が割り当てられるのかなって…」




 確かに、手すりや階段はさびついているし、壁は色あせているし、扉は立てつけが悪くてスムーズに開かないし…。

 階段を登って、すみに穴が空いてる段を見つけたときはちょっと怖かったけど、どんなところでも住めば都っていうし…っ。