【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



 それに“かわいい”ってさらっと言われるのも照れちゃう…。

 お世辞だって分かってるけど、それでもうれしい言葉だもん。




「というか…この学校ってやっぱり、“寮”とかない感じですか…?」


「寮?いや、ないけど。…もしかして、住む場所ない?」




 気遣うように眉を下げて聞かれて、私は席を立ちながらあわてて両手を振った。




「い、いえっ。ただ、寮だと聞いていたので…」


「そっか。家があるならよかった。とりあえず、帰りながら話そうか」


「あ、はい…」




 ほほえむ知暖先輩にうなずいて、私はスクールバッグを持ち、遠目からちらっと見てくる3年2組の人に会釈(えしゃく)して教室を出る。

 階段を下りていくと、他の学年の人もいる分、たくさんの視線を感じたんだけど…知暖先輩がそばにいるからか、声をかけられることはなかった。

 私は寮と聞いた引っ越し先のアパートまで歩いて帰りながら、知暖先輩に昨日の夜アパートに移り住んだことを話す。